『聖☆高校生』主に3巻のレビュー
『聖☆高校生』は全11巻の四コマ漫画で、こじらせた自意識を題材にしたビルドゥングスロマン。
まさか初期設定からあの結末になるとは思いもしませんでした。個人的に、5巻のラストがカタルシス凄まじくて、あれを読み終えた時は、「これでまだ半分以下かよ…!」と震えおののきました(苦笑)
実は一年くらい前に、2巻の途中まで読んでいたのですが、主人公の聖(ひじり)くんに上手く感情移入できなかったのと、好みの女の子がいなかったのとでこれまで積んでいたんですよねー。
でも、数日前にふと思い立って読み直したら、一度読んでいた、というのもあるのでしょうが、すんなり読めました。とくに、里子先輩を可愛く感じたのは自分でも意外で、読むタイミングって重要だなあと再認識させられました。*1
この作品を大きく分けるなら、
1~3巻途中までの童貞編
3巻途中~5巻までの新宿編
6巻~最後までの復帰編
の三つになるでしょうか。*2
いろいろと書きたいことはあるんですが、さっぱりまとまらないので一番好きな新宿編ーーもまとまらなかったので、ひとまず3巻について書こうと思います。
鮎子をレイプして妊娠させた罪悪感から、学校にも行けず、とうとう失踪してしまう聖。
身も心も満身創痍でこのまま路地裏で野垂れ死ぬんだろうか、というところで手を差し伸べた天使こそ、ヘルスで働く華さんだった。
無気力にぼーっとテレビを見て食っちゃ寝しては、華さんを仕事終わりにだけ迎えにいく。そんな生活。
住む場所も着る服も、食べるものさえ与えられて、掃除だって彼女に任せきり。何も、返せない。
ある日、私がいない間ヒマでしょ?とゲームを買ってきてくれる華さん。
受け取ったプレゼントをじっと見つめ、聖は訊ねる。
「華さん」
「んー?」
「僕 インポだよ」
「知ってるわよ 何してもダメだったじゃん」
「だったら僕は なにをしたらいいのかなあ」
……このセリフねぇ。。。僕は甘ったれるな!って怒りよりも、存在としての物哀しさが先に来ちゃうんですよね、何度読んでも。*3
ところで、フーゾクって、僕にとっては(非日常という意味での)ファンタジーです。こういう舞台が出てくるだけで萌えると言いますか、雰囲気だけでノックアウトです。
この作品では、華さんが出てきた初っ端から、ちんカスたまってると内心毒ついていたり、わきがに顔をしかめていたり、時間を気にして作業のように愛撫したり、感じたフリをしたりと、男側からするとショックな描写はあるけども、それでもいいんだよお!(泣)
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『デリバリー』は説教くさくはあるけども、スーツの似合うかっこいい美人が、(『読者ハ読ムナ(笑)』で言うところの)「先生役」なので、個人的には鬱陶しさよりもっと見たい!って気持ちの方が強い。
パンツスーツの似合う美人というのもグッと来ますが、黒髪ロングなのがまた良い!
回し蹴りする時の躍動感ある黒髪とかね*4。引越しの時に処分してしまったから、そういったコマがあったか思い出せないけど、桜坂さんがめちゃくちゃ強かったのは憶えてる(←
仕事も出来て、人望もあるから経営やってみないかーってお偉いさんに言われてるけどそれを断っちゃうんですよね、桜坂さん。
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それはそうと華さんについて。
身長は150センチ前半ってところでしょうか。色っぽいというわけではなく、ロリってわけでもない。
そばかす八重歯で、胸の大きさはパイズリが出来なくはない程度*5。
あざといのとはまた違った愛嬌があって実に良いです。聖の前でだけ無理して明るくしている風ではなく、落ち着きのないハイテンションというわけでもない。その絶妙な、自然体の明るさが良いんですよね。
普通と言えば普通の容姿ですし、『聖☆高校生』全体で見れば描写も少ないんですが、すごく好きなキャラクターです。
ブラコン拗らせてるところももちろん好きです。*6
ただまあ、業が深いですよね。
自分を性の対象とは見なしていなかったにも関わらず、「僕はもういいから …感じるのに専念してよ。どうして欲しいか言って」なんて言いながら健気に愛撫するような弟ってどんな弟だよ!?って思いますもん。*7
……ふと、性別逆にしたらまんまエロゲに出てきそうな妹じゃね、と思いました。でも、そうなると華さんを華さんたらしめる重要なニュアンスが欠けてしまうんですよね。うーむ。
初心に戻って考えてみると……
そうそう、僕が華さん好きなのって、そのニュートラルな明るさと、聖を弟に見立てているところに萌えていたのでした。弟との関係性に萌えていたわけではありません。*8
自分を通して別の誰かを見ているって、切ないですよね。
逆に、それを自覚しつつも、それでもいいから愛して欲しい、とかそういうヒロインも好きです(笑)*9
健全でないどころか不毛なんだけども、身体は繋がっているのに心が繋がっていない、と感じることはかえってその孤独さを強調します。その餓えが更に、より繋がりたいという欲望に火をつけ、空回る。愛というよりは恋。虚しきロマン。
合理的に考えれば無駄だけども、やめられないからこその業とも言えます。
さて、本編に話を戻しましょう。
月経中だったこともあり、経血まみれになった華さんの姿を見て、鮎子のことを思い出した聖は、またもや逃げ出します。
ここから先は話の焦点がホスト業、みくとジュンとの関係、圭との関係の三つに移るので、華さんはまったく出てこなくなります。
思い出すことはありますが、それはあくまで聖の中で完結していて、逃げ出した後の華さんがどうなったのかさっぱりわかりません。それが残念でなりません。。。
小池田センセって物語に関係なくなった登場人物は、どんどん退場させちゃうんですよね。『聖☆高校生』しか読んでいないので、作家性なのか、この作品の特徴なのかはわからないですけども。
例外は、ジュンと、龍人とチカくらいじゃないでしょうか。もしかしたら、圭も入るかも。
それだけタイトに物語っているってことでもあるんですけどね。
*1:というか、『聖☆高校生』に出てくる登場人物って魅力的なキャラクター多いです。とりわけ大人と女の子
*2:作中にはこのような分け方は存在しませんが、まあ便宜上
*3:セリフ単体ではなく、場面ありきですけどね。
*4:脚の筋肉は、他の部位に比べて男女差があまりないらしく、女性が足技を習得するのは合理的です。
*5:cカップくらいかなあ
*6:とはいえ、仮に、華さんの元から去らずにあのまま一緒に暮らしていたとしても、「和志ならそんなこと言わない!」と言われて、どの道うまくいかなくなってたんだろうなぁ……
*7:「私じゃ勃たないところもそっくり」と考えている場面があるので、姉弟同士で愛し合っていたけど、弟がインポだったから勃たなかった、という可能性は除外されます。
*8:今では、弟くんがどんな人物だったか妄想するのも楽しいですけどね。他には「自らの意志で夜の街で働くと決めた」という華さんのモノローグから、なぜ働くことになったのか、とか。
*9:『シンソウノイズ』のひかりちゃんとか